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驚きのウクライナミサイルによるロシア黒海艦隊旗艦モスクワの撃沈

先日ウクライナは地対艦巡航ミサイル「ネプチューン」により、ロシア黒海艦隊旗艦モスクワを撃沈したと発表した。戦勢はウクライナがロシアから一方的に侵入・蹂躙されているところだけに、突如不意を突かれたような予期しないニュースだった。
 モスクワは40年近く前の建造ではあるが、口径の大きい大砲を備え艦砲射撃にも威力を発揮する戦艦のような機能ではなく、現代的なミサイル発射、情報収集、指令等の機能により特化した高性能巡洋艦のようだ。
 ウクライナは対露地上戦では米国から供与された携行型対戦車ミサイル「ジャベリン」、携行型地対空ミサイル「スティンガー」などが活躍し、武器はすべて米国製と思っていただけに、驚きであった。


*)マリウポリの次はオデッサというロシアの攻略計画に狂いを来たす
 マリウポリはもうすぐ陥落かというところだが、陥落すれば次の露軍の目標はヤルタ半島西方の重要な港湾・軍港都市オデッサの攻略である(注1)。その危険はそう遠くない時期かと思われたが、これでしばらくは遠のくことになろう。少なくとも当座は防御に苦慮しているウクライナに余裕を与える重要な転機となる。


それにしてもこれほどの高性能と目される戦闘艦がミサイルたった一発(実際には二発だったようだが)で沈められるとは。対ミサイル防備も相当レベルが高いはずだと思うのだが。
 ロシアは代わりの戦闘艦をバルト海海軍から北海、大西洋、ジブラルタル海峡、地中海を経て回航させるかもしれない。トルコが黒海への入口ダータネルス海峡、ボスポラス海峡通過を認めるかどうかが次の焦点となる。


*)海戦の記憶に残る成果
 地対艦ミサイルの名前「ネプチューン:Neptune」はギリシャ神話に出て来る海の神様(海神)の名前(英語名)である。また惑星の海王星の名前でもある。


今回の結果は、海戦の記憶・歴史に残る成果となる可能性がある。
 鉄の女サッチャーが英国の首相だった時に(1982年)、アルゼンチンが同じく南半球南部にあるフォークランド諸島は自国領だとして英国に宣戦布告をし、フォークランド紛争が起こった。第二次世界大戦後では珍しい正式に宣戦布告という古典的な戦争。鉄の女サッチャー首相は一歩も引かず強硬に立ち向かい、英国民の圧倒的支持を得て最終的には勝利したが、その最中アルゼンチンはミサイルを放って英国軍艦に命中させ撃沈したことがあった。仏製ミサイル「エグゾセ」であった。この時、エグゾセを開発したフランスの技術者達は祝杯を挙げたと言う。
 話は違うが、この紛争の最中、また別の英国軍艦に体当たりしたアルゼンチン軍戦闘機がある。日系のアルゼンチン人飛行士が操縦したものであったという。もっともこれは当時新聞の片隅のコラムで見た記憶であり、真偽を調べてはいない。


昔からフランスは英国に(そして米国にも)反発するところがある。政治的だけでなく文化的にも。英語に対抗して仏語を前面に押し出そうとする。
 力の単位は普段キロと呼んでいるが、正式には万有引力を発見した英国の科学者の名前から採ったニュートン(N:Newton)である。一方、気圧(圧力)は以前はミリバール(mb=milibar)であったが(ミリ=miliは1/1000の意)、今は「人間は考える葦である」と言ったフランスの哲学者の名前パスカル(Pa:Pascal)を使っている(ヘクトパスカル=hectopascalのヘクト=hectoはx100の意)。日本人科学者の名前はまだ採用されていない。国際機関での決定は多数決だから、今後中国や韓国がゴリ押ししてくる可能性がある。その方面に弱い日本は気をつける必要がある。


加盟問題でウクライナ紛争の原因となっているナトー:NATO(英語でNorth Atlantic Treaty Organization:北大西洋条約機構の略)は、仏語ではオタン:OTAN(Organisation du Traité de l'Atlantique Nord)である。ラテン系言語では形容詞は名刺の後に来るから語順は逆になる。海外ニュースを見ると、欧州では”NATO/OTAN”と併記されている。


話はそれたが、仏製兵器は長年その威力を実証する機会は少なく、フォークランド紛争時ようやく、それも英国相手に成果を出せたから、フランス人技術者陣は溜飲を下げたものだろう。


*)ソ連以来、重工業系科学技術に強い国柄
 もともとウクライナはソ連の一部として重工業には強い素地、基盤を持っている。高度な原子力、軍需、宇宙産業などの研究開発を行っていたはずである。中国が現在保持している最初の航空母艦はウクライナから譲り受けたものである。
 また今回の紛争で明らかになったように、インターネット情報戦などのIT産業にも強いようだ。チェルノブイリ原発事故もよく知られているが、主要電力供給源は原子力である。ソビエト社会主義革命を指導したレーニンは電化が重要だと喝破した。そうした歴史と国是もあって重工業には強い。


今回の紛争の先行きは見えないが、終熄後ウクライナは国土を再建しなければならない。
国に金は無いが、潜在的な科学技術力は大きい。
 ソ連・ロシアの兵器は親欧米諸国を除き世界中に輸出されているが、IT情報戦やロシア艦モスクワ撃沈で名声を上げたミサイル「ネプチューン」など、ウクライナは戦争終了後、武器輸出についても世界中から注目を集めるかもしれない。


(注1)

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