zepeのブログ

いつも株を買っては損を抱え込む長期低迷投資家

自由の声を上げるか、ウクライナ




2010年春にキエフに行ったことがある。関空からトルコ航空を利用すると夜発つので、地方空港から行きやすい。イスタンブールに行った後、北上するがその間の時差はほとんど無い。


*)美人が多いかどうか
 現地の情報をとインターネット検索すると、あるバックパッカー旅行者がロシアのモスクワからキエフに来ると美人が多いような気がすると書いてある。今回の北京五輪のフィギュアスケートで、ドーピング問題で話題になったロシアのカミラ・ワリエワもなかなかの美人だから、本当かどうかはわからない。現地に行くと、結構近年までモンゴル征服の後裔であるハン国(汗国)が黒海湾岸に存続していた土地柄である。多くの民族が通りすぎ、中には腰を落ち着けた人々もあるだろう。多民族で金髪もいるが東洋系の混血した顔立ちもある。


*)女性は皆ハイヒール
 通勤に向かう女性を見ると皆ハイヒールを履いている。別な機会に足は痛くならないのかと訊いてみたら、「別に!。子供の時から履いている。」ということだった。なるほど日本人とは違う訳だ。


*)キエフの地下鉄駅
 ロシア・モスクワの地下鉄駅は深くて核戦争時の避難場所を想定していると聞いたことがあるが、ウクライナ・キエフの地下鉄駅も相当深い。長いエスカレータはガラガラと音を立てて高速で動き、片側を人々は歩き進んでいる。
 エスカレーター上は歩かないようにしましょうと言うが、世界中どこの大都市に行っても人々は歩いている。大都市は忙しい。


*)芸術
 ロシア系民族は舞踊芸術のレベルが高く伝統がある。バレエ、オペラ、サーカスのいずれもハイレベルである。サーカスでは休憩の合間中に子供達にポニーに乗せるサービスを行っていた。


*)金が無い
 ソ連崩壊後、独立したウクライナの財政的基盤は弱く、金が無い。重工業が盛んだったソ連時代には、戦闘機、ロケット、宇宙開発、原子力などの研究開発を行っていたはずだが、独立後は研究費を申請して採択されても研究費が来ないと言っていた。


*)海外との共同研究を望む。伝統的に理論研究が多い。
 だから大学や研究所などの学術・研究拠点は、海外との共同研究を望み、それで研究費を獲得する。伝統的にロシア(系も含む)では研究費に事欠くこともあってなのか、理論研究が多い。世界的に影響を与えた優れた科学理論も多い。


*)ロシア発祥の地のキエフ
 キエフはロシア発祥の地でもある。最もロシアらしい地と思っていたのだが、いまはウクライナという違う民族、違う国家になっているとは。キエフ公国はその後モンゴルに征服されて滅びる。


*)キエフの地勢的位置
 広い大平原の中、屈指の大河ドニエプル川が流れているが、その流域の中で川の側に丘がある場所がある。それがキエフである。こうした地勢上の条件に目を付け、本拠地を置いたのだろう。


*)ムソルグスキー作曲「キエフの大門」
 ムソルグスキーが作曲した組曲「展覧会の絵」の中に、「キエフの大門」という曲がある。
 かっては遠くからでも草原の彼方に夕陽を浴びてキエフの大門がキラキラ光って見えたのであろうか。


*)ナイチンゲールが活躍したクリミア
 クリミアには、ナイチンゲールが活躍したクリミア戦争でのセバストポリ要塞、第二次世界大戦の日本の運命を決したヤルタ会談などの地がある。


*)ソ連フルシチョフ首相クリミアをウクライナに帰属せしめる
 フルシチョフはスターリン批判を行い、キューバ危機で米国ケネディ大統領と対決したソ連の首相だが、彼の時にクリミア半島をウクライナに含めたようだ。どういう動機だったのか。ソ連だったその当時、我々も含め、その後こんなことになるとは予想だにしなかった。


*)歴史にもしも-ナポレオンが農奴解放令を発していたら-
 フランス革命後、ナポレオンが欧州大陸を席巻し、英国侵攻を企図したがネルソン提督とのトラファルガー海戦で敗北して英国上陸作戦は潰えた。大陸封鎖令を発し従わないロシアの攻略に遠征した。連戦連勝し首都モスクワを陥れたが、ロシア政府は奥地に退却し、モスクワの大火災、冬将軍の到来とともに、敗北を重ね、皇帝退位、ナポレオン体制の崩壊に至った。


*)チャイコフスキーの序曲「1812年」
 チャイコフスキーの序曲「1812年」は、この時のロシアの戦いと勝利を描いたもので、ロシアとフランスの国歌のメロディーが出て来る。


*)伝統的なお家芸:退却作戦と冬将軍
 このロシア軍の伝統的なお家芸:退却作戦と冬将軍はナポレオンの時だけでなく、第二次世界大戦でのヒトラーの侵略の時も効力を発揮し、最終的には敵国首都を陥落させ勝利に導いている。日本も同じ状況に陥りそうになった。


*)映画「明治天皇と日露戦争」
 子供の頃、「明治天皇と日露戦争」、「明治天皇と日清戦争」という映画が地方の映画館にも回ってきた。明治天皇を嵐寛寿郎が演じ、旅順要塞攻略の乃木希典将軍や日本海海戦の東郷平八郎元帥はもちろん出て来る。廣瀬武夫中佐が沈み行く船の中で必死に部下の名を呼ぶシーンなどあって、戦闘シーンではないしあまり面白くないなと思ったが、その迫真力のある演技などは印象に残った。その意味もその頃はわからなかったが..。
 見たのは子供の頃だったがなかなか面白かった。どんなことが起きたのか、史実やエピソードも学べる。日本史を覚えるのに受験生が苦戦しているようなら、この頃の国際情勢や史実をはるかに簡単に興味深く把握することができる。
 日露戦争でも満州の平原で、勝つには勝っている状態だったが、それ以上動けなくなった。ロシア皇帝ニコライ二世は我が国の領土は侵されていないと、負けを認めず、戦争を終了しようとはしなかった。しかし一方で国内の情勢は革命的機運が高まってきて、帝国体制の危機に陥る恐れがあった。


*)エイゼンシュテイン監督「戦艦ポチョムキン」
 日露戦争の最中の1905年、露国黒海艦隊の戦艦ポチョムキンで反乱が起きた。その時の出来事を描いたエイゼンシュテイン監督の「戦艦ポチョムキン」は映画史上の傑作とされる。今回ロシア軍に軍事施設が攻撃された軍港のあるオデッサはその舞台として有名である。


*)ロシア側が最も恐れていたこと
 この戦役の最中、ロシア側が最も恐れていたのは、ナポレオンが自由・平等などのフランス革命の精神を国内に引き込んで、人民の地位を引き上げるような改革を布告することであった。


*)トルストイの「戦争と平和」
 トルストイの「戦争と平和」には、フランス流のそうした考えに同調する青年貴族も出て来る。ちなみに筆者は何度か挑戦したが長過ぎて読破したことはない。


*)フランス革命の波及・余波を恐れる
 英国、プロイセン、オーストリア等フランスの周囲はすべて王・侯国であり、フランス革命の精神である自由・平等・博愛を標榜しながら国王を処刑するような共和国体制が自国に波及することを極度に恐れた。王政各国とも体制の保全が最重要であった。
 ナポレオンが失脚した後、「会議は踊る」のウィーン会議で体制復古がなされ、敗戦国にもかかわらず、びっこのタレイランがうまく立ち回り、国外領土は失ったが、フランス本国はほとんど失わずに保全し、ブルボン王朝が復活した。


*)土地分配
 フランス革命では、恐怖政治を行ったロベスピエールが教会や貴族から農民に農耕地を分かち与えたために、その後保守化した。フランスは今も高度先進国であるが農業国でもある。
 日本では戦後マッカーサーの進駐軍が農地改革を行って小作農を自営農民にした。戦後一貫して保守自民党が政権を保持できたのは、この時に達成された経済的・構造的安定性に依拠している。筆者が子供の頃には高校に到るまで、没落した地主の息子だという同級生が何人かいた。


ロシアはナポレオン侵攻50年後、農奴解放令を発したが、実態は変わらず革命的機運は先鋭化し、やがてレーニンによる社会主義革命が起きるに至った。ニコライ二世は処刑されている。


*)もしナポレオンが農奴解放令を発していたら
 もしナポレオンが農奴解放令を発していたら、ロシアの政治的基盤は大変動を起こしていただろう。たとえ戦術的に敗北しても影響力は残り、ナポレオンの運命もどうなっていたかわからない。
 しかし実際にはナポレオンは既に皇帝になり、子供のできないジョゼフィーヌを離婚してオーストリア・ハプスブルグ家の皇女を妻に迎え、革命の精神を伝えようとする発想はもともと失っていた。
 ベートーベンは心酔していたが、皇帝になったと聞いて献呈しようとしていた曲の台紙を破り捨てた。


*)現在のロシア軍のウクライナ侵攻-自由を叫ぶ人民を占領・抑圧するのは諸刃の剣
 今日、もしロシアの軍事侵攻に対してウクライナが徹底抗戦をする気があれば、大統領は自由を標榜し、国民に自由を鼓舞すればよい。西欧流の自由とか民主主義とかは、あまり馴染みの無い風土・民族性ではあるが。
 果たしてナポレオン以来懸案の課題:自由は実現するか。


自由を叫ぶ人民を占領・抑圧するのはプーチン大統領にとっては諸刃の剣だ。
 一国二制度の取り決めを破って香港に進軍した習近平中国とは少し状況が異なる。プーチンの足元のロシアにも同じような素地があるからだ。
 ロシアとウクライナは近い。地政学的にも民族的にも政治的にも近い。自由を叫ぶ隣人がいると自国民にも波及しかねない。以前からプーチンの強権政治に対しては根強い反対勢力がある。占領地での人民の反感に手こずり流血騒ぎなどが続出するようになるなら、自国での体制も危機に陥る可能性がある。
 欧州最後の独裁国家と言われるベラルーシも危ない。ここも亡命している大統領選での前候補者をはじめ反対勢力がいる。東京オリンピックでも亡命した陸上女子選手がいた。いずれ政権転覆が起きる可能性は十分にあり得る。
 人民が自由を標榜するようになるなら、ロシア軍による占領は厄介なものになるだろう。


かってソ連体制下、プラハの春と呼ばれたチェコスロバキアの雪解けの動きに対して、軍事侵攻して制圧した。この時は完全に他民族が相手であった。ウクライナの場合は親戚のようなものである。つながりが深く、そう簡単ではなくなるだろう。


*)勝利への戦略:自由を鼓舞し長引かせる
 徹底抗戦をする気があれば、大統領は国民に自由を鼓舞する。犠牲者は出るが、長引けばプーチンの体制は危うくなる。もともと国内に存在する反対勢力が連帯する可能性もある。戦費もかかり経済状況も悪化を辿る。
 革命は輸出できないと言われているが、革命を輸出しようとしたアフガニスタン侵攻駐留時のように、泥沼化し自国民に犠牲者が出て来るようになれば、厭戦機運が増し国民は不満を募らすことになるだろう。プーチン体制は危うくなり、やっていられなくなるだろう。


但し、自由を鼓舞し長引かせる-ゲリラ戦略に近いこの戦術は、犠牲者が多く国土は荒廃する。
 NATO加盟は、地政学的位置、国際情勢、国家の安定性から言って、まず無理だろう。
なにもNATO加盟にこだわらず、より実質的な行き方もあると思うのだが、ゼレンスキー大統領はあくまで進めたがったのだろう。なぜこだわったのか、親露派とウクライナ民族派の対立は他人には窺い知れぬところがあるのかもしれない。


*)ソチ五輪期間中、厳寒下の座り込み-日本人とは体質が違う
 前々回のロシア・ソチ冬季五輪期間中、ウクライナでは親露派大統領に反対する人々が厳寒下24時間座り込み、反対デモ活動を続けた。長いものには巻かれろという日本人とは違った体質、国民性である。


*)必ず意見が分かれるロシア人気質
 ロシアに滞在したことのある人の話を聞くと、ある問題について議論になると、人々はわたしはこう思う、いや自分はこう思うと必ず意見が二つに分かれるそうだ。
 また言うだけ言ってみる。失敗しても、うまく行かなくともよい。もし言い分が通れば儲けものというところも普通の発想であるらしい。


今回のウクライナ侵攻に対して、ロシア国内でも反対デモをして拘束され護送車にぶち込まれる若者達を見ると、ウクライナも含めロシア人気質と文化は、日本人とは体質が違うと思わざるを得ない。


*)台湾有事
 習近平主席と中国軍事部門は、今回のロシア軍によるウクライナ侵攻の推移を見つめているはずである。もしウクライナ侵攻が成功裡に終了すれば、間違ったメッセージを与えることになろう。北京五輪終了後、自由で開かれたインド太平洋構想や日米豪印のクワッドの中心メンバー国日本にとってただちに直面する問題である。(注1),(注2)


(注1)


(注2)

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