zepeのブログ

いつも株を買っては損を抱え込む長期低迷投資家

再びソフトバンクG傘下英国アームの売却について。日本=英国企業連合を作り日本は保有継続すべき。(短縮版)

*)独占禁止法にかかり容易でないアームの売却
 9904ソフトバンクGは数年前買収した英国半導体設計会社アーム(ARM)を米国半導体製造エヌビディア(NVIDIA)に売却することを策定、相当額の利益を得るはずだった。
 本件については以前(R3/5/2)アームのM&A処理とは別に、日英が共同保有し発展させる価値が十分にあると提言した(注1)。


その後売却交渉ははかばしく進展していない。
 エヌビディアは自動運転用半導体やゲーム用GPUを製造する高成長の半導体界の一方の雄であり、買収が実現すれば鬼に金棒となる案件である。
 しかし米連邦取引委員会は売却阻止を目指し行政審判手続きを開始した。中国も売却を認めそうにない。独占禁止法・反トラスト法に抵触する可能性が高いという判断である。


*)グローバルな顧客を持つアームにとっては業界の一方に偏しないほうがよい
 アームは英国が誇る半導体設計の優良会社である。一方エヌビディアにはインテルやAMIのような有力な競争会社がある。グローバルに顧客を持つアームにとっては特定半導体会社に属せば、競争会社はアームに発注しずらくなり市場の過半を失う可能性がある。
 半導体と無関係な投資会社のソフトバンク傘下のほうが世界中の会社を顧客としていける点でむしろ好都合である。


*)投資会社が製造会社を経営するのは無理
 ソフトバンクとアームは財テク会社がものづくり会社を所有する関係である。半導体メーカーではないソフトバンクが企業経営していくのは荷が重い。財テクとして一時的に保有したのでありいつかは売り抜けなければならない。メーカー経営に足を取られたら永久に脱却できなくなる。投資会社と製造会社との掛け持ちは不可能である。


*)英国はアームの売却帰属先に無関心ではいられない
 英国は優良会社アームの売却帰属先に無関心ではない。ソフトバンクによる買収を承認したのも、ソフトバンクと日本に信頼感を持っていたからだろう。しかしその後の売却先は孫正義社長の胸先三寸次第というのでは勝手違ったということになる。英国は売却先について目を離す訳には行かない。


*)戦略的に重要な位置付けにあるアーム
 戦略的にアームは重要かつそれだけの価値がある。
例えば中国に買収される事態を考えてみるがよい。安全保障上の大問題になるのは明らかである。
 ドイツはどうか。英国はEUを脱退したばかりである。わざわざ自国の会社をEUの会社にする理由は全く考えられない。
 米国はどうか。米国なら英国にとって全く問題無いだろう。しかし上述した如く、独占禁止法の問題、あるいは半導体の一方に与(くみ)することになっては他方の顧客を失う可能性がある。


*)日英戦略的パートナーシップ。日本が保有継続するのは戦略的に意味がある。
 日本が保有継続するのは戦略的に意味がある。日英は互いを必要とする戦略的パートナーシップの関係にある。
 日本は日米豪印の「自由で開かれたインド太平洋構想」(クアッド)の国々と中国による強権的膨張政策に対抗する必要があり、英国はEUから脱退し新たな戦略的・経済的パートナーシップを構築していかねばならない。TPP加入はその第一歩である。
 原子力発電所についても日立など日本企業が請け負っていたが、財政的に成り立たなくなり撤退した。その後中国が参入したが、5Gのファーウェイ同様、安価ではあるが安全保障上の問題から排除の可能性大である。
 ここは戦略的パートナーで国益が合致する日本が保持し続けるのは英国にとっても好ましいはずだ。


*)子会社化よりも日英企業連合のほうが適している
 買収により傘下に収めるのは独占禁止法により承認が困難である。子会社化よりも、日英の戦略的パートナーシップ下において、日産=ルノーのような日英企業連合体にするほうがより発展性があるのではないか。


*)ソニーかNTTとの日英企業連合の可能性
 半導体製造会社として、6502東芝、6723ルネサスエレクトロニクスがあるが、それぞれ再建途上、経営基盤が弱い等の問題がある。情報・通信・ハイテク関連では6758ソニーG、NTT(9432日本電信電話)の国際優良会社がある。
 ソニーかNTTとの日英企業連合体、あるいはソフトバンクとソニーが出資して持株会社を作りその中でソニーの系列子会社が半導体製造に乗り出し企業連合を組む等が考えられる。


*)日本政府は真剣に検討すべき
 産業の米=半導体製造の地盤低下に対して、政府は重点補助で再生強化を図ろうとしている。ソフトバンクが独占禁止法に触れ売却しあぐねている現在、これは一つのチャンスでもある。国益、英国との戦略的パートナーの観点から、日本が引続きアームを保持し続けるのは十分に意義がある。日本政府として真剣に検討すべきである。


(注1)

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