zepeのブログ

いつも株を買っては損を抱え込む長期低迷投資家

再びソフトバンクG傘下英国アームの売却について。日本=英国企業連合を作り日本は保有継続すべき。

*)独占禁止法にかかり容易でないアームの売却
 9904ソフトバンクGは数年前買収した英国半導体設計会社アーム(ARM)を米国半導体製造会社エヌビディア(NVIDIA)に売却することを策定。売却により相当額の利益を得るはずだった。
 筆者は以前アームのM&A処理とは別に、日本と英国が共同保有し維持発展させる価値が十分にあると提言した(注1)。


それ以降、売却交渉ははかばしく進展していない。
 エヌビディアは自動運転用半導体やゲーム用のGPUを製造し、高成長の半導体界の一方の雄であり、買収が実現すればエヌビディアにとっては鬼に金棒の案件である。
 しかし米連邦取引委員会(FTC)は売却阻止を目指し行政審判手続きを開始した。中国も売却を認めそうにない。エヌビディアがアームを子会社にすれば、独占禁止法・反トラスト法に抵触する可能性が高いという判断である。


*)グローバルな顧客を持つアームにとっては業界の一方に偏しないほうがよい。
 エヌビディアもアームも世界中に顧客を持つ半導体会社であるが、エヌビディアにはインテルやAMIのような有力な競争会社がある。
 一方、アームは英国が誇る優良会社で、現在戦略的に重要性が増している半導体設計の中核会社である。グローバルに顧客を持つアームにとっては、エヌビディアのような特定半導体会社に属せば、競争会社はアームに発注しずらくなる。現在はグローバルに顧客を持つが、エヌビディアの競争会社へのセールス市場を失う可能性がある。


アームにとっては、エヌビディア、インテル、AMIのような半導体最終製品会社傘下に入るよりも、半導体と無関係な投資会社のソフトバンクG、あるいは半導体部品会社の東京エレクトロンなどに属したほうが世界中の会社を顧客としていける点では、好都合なのではないだろうか。


類似の事例として、自動車タイヤ製造販売のブリジストンがある。かってブリジストンは自動車も生産していた。しかし他の自動車メーカーはタイヤを購入してくれない。競争会社だからである。自動車製造を断念し部品会社に徹することによって、ブリジストンはトヨタにも日産にも販売できるようになり、その後、大を成した。


*)投資会社が製造会社を経営するのは無理
 現在のソフトバンクGとアームの関係は、財テク会社がものづくり会社を所有しているようなものである。半導体メーカーではないソフトバンクGが今後とも保有、企業経営・維持発展していくのは荷が重い。
 投資会社やファンドは財テクとして一時的に保有したのであり、いつかは売り払う、売り抜けなければならない。メーカー経営に足を取られたら、永久に脱却できなくなる。投資会社と製造会社との掛け持ちは不可能である。


*)日本が保有継続するのは戦略的に意味がある
 ソフトバンクGは投資会社として利益をあげるために売却は必須であるが、それとは別に日本が保有継続するのは戦略的に考慮する意味がある


*)日英戦略的パートナーシップ
 日本と英国は互いに互いを必要とする戦略的パートナーシップの関係にある。
日本は日米豪印の「自由で開かれたインド太平洋構想」(クアッド)の国々と、中国による強権的膨張政策に対抗する必要があるし、英国はEUから脱退し新たな戦略的・経済的パートナーシップを構築していかねばならない。TPP加入はその第一歩である。


*)英国はアームの売却帰属先に無関心ではいられない
 英国は国が誇る優良会社アームの売却帰属先に無関心ではない。ソフトバンクGが買収することを承認したのも、一つにはソフトバンクGと日本に信頼感を持っていたからだろう。しかしその先の売却先についてソフトバンクGの孫正義社長の胸先三寸というのでは、勝手違ったということになる。例えば中国企業に売却などとなったら、黙っている訳には行かないだろう。英国はその売却先について目を離す訳には行かない。


*)戦略的に重要な位置付けにあるアーム
 戦略的にアームは重要かつそれだけの価値がある。
例えばアームが中国に買収される事態を考えてみるがよい。安全保障上の大問題になるのは明らかである。
 ドイツはどうか。英国はEUを脱退したばかりである。わざわざ自国の会社をEUの会社にする理由は全く考えられない。
 米国はどうか。米国なら英国にとって全く問題無いだろう。しかし上述した如く、独占禁止法の問題、あるいは半導体の一方に与(くみ)することになっては他方の顧客を失う可能性がある。


一方、日本と英国は政治的にも経済的にもパートナーシップを結ぶべき、ウィンウィン(win=win)の関係にある。ここは英国と戦略的パートナーシップで国益が合致する日本が保持し続けることは、英国にとっても好都合なはずだ。
 原子力発電所についても日立など日本企業が請け負っていたが、財政的に成り立たなくなり撤退した。その後、中国が参入してきたが、5Gのファーウェイ同様、価格的には安価であるが安全保障上問題があり、排除の可能性大である。


*)子会社化よりも企業連合のほうが適している。日英企業連合を!
 買収により傘下に収めるのは独占禁止法により承認が困難である。
一方的な子会社化にするよりも、日英の戦略的パートナーシップ下において、伸び伸びと企業を発展させるほうが、アームにとっても、日英両国にとっても好ましい。日産=ルノー企業連合のような企業連合体のほうが向いているのではないか。
日本=英国企業連合の可能性を考えてはどうか。


*)企業連合の可能性のある日本企業
 可能性としては、半導体会社や最終製品の情報・通信・ハイテク機器会社などが考えられる。
(1)東芝
 常に巨額の投資を義務づけられる半導体メモリー製造を各社が手放していった中で、ほとんど唯一生き残った日本の会社であったが、いまは複数の海外会社とファンドの共同出資の所有下にある。
 原子力が華やかなりし頃、米国ウェスティングハウス社は日本の企業にとって仰ぎ見るような存在だった。落ち目になった頃、東芝は市場予想よりもはるかに高価格で買収した。高値掴みの米国原子力事業は破綻に陥り、東芝本体の財政も破錠した。現在再建途上にあるが、いまなおファンドや物言う株主の存在と経営に対する干渉で、必ずしも開発と経営に専念できる状況に無い。経営は常に不安定である。
 本来、企業連合の第一候補に挙げられてよいところであるが、不適だろう。


(2)ルネサスエレクトロニクス
 ソフトバンクGが半導体会社を経営するのは荷が重いから日本政府がアームの株式を買い取ってルネッサンスのような別会社を設立して企業連合体にするか、あるいはアームを含む全体の持株会社を作って統合する。
 ただ過去の経験から、政府が出資し相当量の株式を保有する会社は、パフォーマンスが良くないという印象がある。あくまで民間だけの出資のほうがよいのではないか。
 6723ルネサスエレクトロニクスは、最近は自動車用パワー半導体が主力になっているが、会社自体の経営状況は一本立ちに課題があるようだ。
不適当だろう。


(3)他の半導体関連会社
 半導体部品会社、半導体関連素材会社として
8035東京エレクトロン、4063信越化学工業
などがある。


(4)ソニー
 ソニーは半導体製造会社ではなく、半導体を活用する最終製品会社であり、エヌビディアの時と同様に、競争会社との関係で顧客が市場の一方に偏する可能性がある。
 半導体製造に踏み出す意欲があれば、子会社を設立すれば、企業連合の日本側企業として十分可能である。


(5)NTT
 半導体会社ではないが、情報・通信会社の9432日本電信電話(NTT )がある。


(6)日本製鉄
 半導体とは全く関係無いが大規模素材会社として、5401日本製鉄などがある。


*)日本政府は真剣に検討すべき
 私企業である投資会社が傘下の会社を売買して利益を上げるのとは別の観点、日本の国益、国力といった戦略的観点から、日本が引続きアームを保持し続けるのは十分に意義がある。日本政府として真剣に検討するに値する。


いま日本では、産業の米(こめ)-半導体-の製造基礎体力が失われてしまっており、政府は重点的に補助金を投下して強化育成・発展を図ろうとしている。ソフトバンクGが独占禁止法に触れ、売却しあぐねている現在、これは一つのチャンスでもある。検討に値する。


*)ソニーかNTTとの日英企業連合はどうか?
 ソニーかNTTの系列子会社との日英企業連合体が適当ではなかろうか。
あるいはソフトバンクGとソニーが出資して持株会社を作る。その中でソニーが半導体製造に乗り出すようなら企業連合として発展させることができる。
以上、提言である。


(注1)

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