zepeのブログ

いつも株を買っては損を抱え込む長期低迷投資家

9904ソフトバンクGの英国アーム売却

9904ソフトバンクグループの孫正義社長は昨年秋、5年前に買収した英国半導体設計企業アーム(ARM)を米国エヌビディア(NVIDIA)に売却すると発表した。
 これまで保持した期間は数年である。3兆円の買収価格よりも高い価格4兆円で売却し、数年で好成績の取引をしたわけだから純投資案件としては成功である。


振り返って英国がアームのソフトバンクによる買収を認めたのは、日本の会社であり安全保障上問題無い。競合会社ではない。独占禁止法には該当しない。だったからだろう。要するに、ソフトバンクならよいと信頼してのことである。
 株式は皆金儲けのためにするのであり、きれいな金、汚い金などというものは存在しない。そうした株式利益至上主義の論理から言えば、全く問題は無いのだろう。しかしもし中国の会社がより高額で買収するといった場合はどうなるのだろうか。孫社長はどうするだろうか。
 英国が誇る現代のハイテク企業の落ち着き先が日本だったから、先のソフトバンクによる買収を認めたのである。ただその先ソフトバンクが売却する際の決定はソフトバンクが全権を握り、その帰趨はすべて孫社長の胸先三寸というのでは、英国政府にとっては勝手違った成行だったのではなかろうか。
 アームはコンピュータのCPU(中央演算処理装置)の回路設計図や仕様が世界中に採用されている現代社会の最も重要な基本技術を有する企業である。
 エヌビディアはゲームや暗号資産、電気自動車向けのGPU(画像処理演算グラフィックボード)などの半導体で急成長している超優良企業である。CPUとGPUの両者を握れば鬼に金棒という面もある。米国であるし安全保障上は問題無いだろう。しかし競合会社という側面もあるし、英国の誇るIT企業が米国企業になってしまうのか、英国は手放してよいのかという戦略上あるいは国民感情からも簡単には認められないのではなかろうか。


 これでは今後ソフトバンクなどのような投資ファンド会社に売却する時は、その次、その次の次なども考慮して許諾しなければならないことになる。当然、類似の案件がまた起きた時、ソフトバンクに手放しで売却を認めるか、慎重になることは十分あり得るだろう。
 例えば日本の日産自動車をフランスが完全子会社化し、その後当初の意図とは異なり赤字経営に陥り負担に耐え切れず、中国あるいは韓国に売却するとなったら、日本としてはどんなものだろう。
 フランスあるいはドイツだったらやりかねないかもしれない。なぜなら彼らにとって極東は遠い世界であり利害が直接関わる案件ではない。また特に中国などとは貿易上友好関係を維持発展させたほうが好都合であり、日本発の企業であろうと売却になんら抵抗は無い。経済的側面から言えば、彼らは日本よりもむしろ中国の歓心を買うことを優先するだろう。もし仏政府が100%株式を保有していれば、なんら口出しをする権利は無い。だから何も言えないはずだ。でも国民感情としては...。 、と言うのならフランスに売却する前に、その次の売却の事態も考慮しておかねばならないということになる。


経済活動は倫理で拘束するのではなく、経済原理の自由に任せるのが資本主義の原則であり、ほかならぬ自由主義を標榜する「国富論」の著者アダム・スミスを生んだ英国であるからその通りと言うのだろうが、一方でこんなはずじゃなかったという英国の舌打ちも聞こえて来そうな気もする...。これは考え過ぎだろうか。


もちろん今回の売却が英国にとって喜ばしきことなのか、喜ばしくないことなのか、本稿を書くにあたって判断する能力は持ち合わせていない。
 ただ言えることは、ソフトバンクのような会社やファンドの金融利益のみ追求する純投資会社でなければ、今後ともアームを保持し富士通やNECのような日本のIT半導体企業とともに協業の道を開き、英国政府と日本政府が共同でアームの育成強化を図っていくことは企業の育成発展を第一と考える企業人倫理や日英相互の安全保障上の戦略的観点から、十分以上に考慮する余地があると思うが..。
 ソフトバンクの孫社長の観点とは違った観点から、日本の国益を考える観点からも日英共同で保有を継続し強化育成を図っていく価値は十分にあると考える。

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