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慰安婦問題、韓国裁判所従来とは真逆の判決。その意図するところ。

韓国ソウル地方裁判所は元慰安婦賠償請求に対し、国際法上の「主権免除」の原則が適用されるとして、訴えを退けた。1月には同じ裁判所で賠償を命じる判決をしており、今回は真逆の判決である。文大統領は1月年頭の記者会見、続いて3月にも、慰安婦問題、徴用工問題について「困惑している」と発言していた。今回の判決はその発言に沿った判決である。
 なぜ180度逆の判決か。新聞によっては日本に対して方針軟化かという見出しが出されていたが、理解できているとは思えない。


今の時点で前回とは真逆の判決が出て来た、その意図は?
 慰安婦問題や徴用工問題について日本が抗議すると、韓国政府や外相は、独立した司法の判断だから尊重せざるを得ないと言って抗議をかわす理由にしてきたが、韓国の司法は三権分立で独立しているとはとても言えない。
 時の世論や風潮、政権の意向によって変化する。あまり信用できない。


判断は人類の平和と善隣友好のために、といった高尚なものではなく、もっと利害に関わる直接的な問題からの発想である。韓国政権がリードする世論や風潮がどういったものか。慰安婦像を見よ。
 慰安婦像は世界中に設置され、アートとしてドイツの美術館に設置され、先の名古屋で開催された美術展「あいちトリエンナーレ」でも展示された。慰安婦像がアートと言えるしろものかどうか、どのような意図で作られたかどうかは、韓国の公園に設置された慰安婦像の前に這いつくばる安倍首相土下座像を見ればわかる。(注1)


より卑近な利害からの発想に基づく判決である。発想とはなにか。現在の状況においては国益に反するためである。もっとくだけた言い方をすれば、現時点においては都合が悪いからである。


今回の判決の、あるいはその底流にある文大統領の意図は?
ソウル地裁の裁判官は1月の判決の時から人が変わっている。
 一見、日本の立場に都合のよいような判決内容だが、日本に向けてのものか。日本の主張に沿い、国際関係の正常化をうながすためのものか。
 韓国国内に向けてか。国内では日本憎しの判決のほうが人気があるのだ。賛否両論、今回の判決や文大統領に対する非難も多いはずである。


韓国国内でも、日本でも、文大統領の意図は必ずしも理解されていない。
 慰安婦問題にせよ、徴用工問題にせよ、賠償請求や現金化移行に困惑していると言う文大統領の真意はなにか。
 それは韓国の国益と体面を考えてのことである。(注2)
誤解を恐れず端的に言えば、判決は米国に向けてなされたのである。日本に向けてではなく、米国に向けてアピールしたいのである。
 そしてさらにG7主要先進国、日本を除く構成国に向けての体面である。


韓国はG7会議に招聘されている。
 また文大統領の発言はトランプ前大統領による選挙無効の運動がほぼ終熄し、米国バイデン新政権が成立した頃である。バイデン新政権からは日韓関係の改善の要請があったのではなかろうか。


もっとうがった言い方をすれば、5月には文大統領とバイデン大統領との会見が予定されている。その前に従来の日本に対する元慰安婦賠償を命じる判決は都合が悪いのである。日本と好んで係争を起こす韓国の性向は、現時点においては対外的に都合が悪いのである。
 従来とは真逆の今回の判決は都合を合わせるためである。また主要列国に対する体面からも必要なのである。
 文大統領はほっとしたことだろう。これで文大統領はバイデン大統領に、あるいはその後のG7構成国の首脳に「国民の大半は慰安婦問題について現状には満足していない。しかし我が国はそうした声があるのを認識しながらも、国際基準に則った対応をしている。」と胸を張って体面を取り繕うことができるからだ。これは想像に過ぎるセリフかもしれないが、しかし文大統領はこうした立ち回りが上手な人のように思える。
 なぜこうしたことを言いたいのか。それは自国の国益を睨んでのことである。「韓国はG7構成国に伍する先進民主国家である」と米国を含む主要列国に主張したいのである。


韓国の対日政策は特に最近の外交において、1)常に大国(米国、場合によっては中国)を自分の側に取り込もうとする、あるいは2)国際機関においてふだんから情報宣伝しておいて多数決による決議において自国に有利な決議を勝ち取ることに常時努めている。これらを日本をターゲットと想定して行っている。
 今回の判決を導いた文大統領は国内の対日強硬派からは非難されるだろう。賛否両論、恐らくは感情的な批判者が勢いを得て多数者になるだろう。彼らの多くは文大統領の本来の意図は理解できない。文大統領は「日本に対しての方針は変わりは無い。決して忘れてはいない。今はこうすることが必要なのである。」と答えるだろう。そしてそれは真意だろう。


現在の韓国は心底から日本との友好を求めているのではない。
 日本は列国国際メンバーへの加入国の討議・審査などの状況で、都合で友好的・敵対的を使い分ける国には気をつける必要がある。国際機関に加入前と加入後では姿勢が変わることは十分にあり得る。


現在の状況を見る限り、今後も政治レベルではこうした日韓関係は続くだろう。それは新しく生まれてくる世代に日本の戦後賠償・経済援助などは完全に無視し反日教育を施しているからである。したがって政治レベルでは安易な妥協は避けるべきである。それは対日強硬派に成功体験を意識させ、さらにエスカレートしてくるからである。


しかし一方では、人間と人間とのつきあい、民衆、個別レベル、学術教育交流レベルは、政治情勢の如何を問わず、互いの友好を図るべく不断に実施に努めるべきである。こうしたことは学術軽視の一部自民党には理解できないだろうが、学術は短絡的な政治家とはスタンスが異なる。政治の情勢に関わらず、長い目で見ての両国国民の友好の発展に寄与するものである。


今回の問題はもとはと言えば、安倍首相が朴槿恵韓国前大統領政権末期に、基金を設けて韓国政府が設置する財団に拠出し、元慰安婦への支援事業を行い、この問題を次の世代に引継がれないよう我々の世代で最終的かつ不可逆的に解決するとして始まったものである。
 慰安婦問題を含め,日韓間の財産・請求権の問題は,1965年の日韓請求権・経済協力協定で完全かつ最終的に解決済みである。
 解決済みと言いながら、なぜこうした不要なことをするのか、妙なことをすると思っていたのだが、屋上屋を重ねるとはこのことだ。やらずもがなの薮蛇(やぶへび)だったのだ。
 こうした日韓関係の正常化や親善の動きに対しては、韓国国内では格好の攻撃対象になる。その後文大統領政権に変わり、財団は解散された。
 安倍前首相の必要もない小手先(こてさき)のことをして「藪をつついて蛇を出す」ことになったようなものである。解決済の立場を取る日本政府が、それと矛盾するにも拘わらず、屋上屋を架す式に直接手を下している。こうしたことは、よく根回しをして民間レベルで実施するべきである。



(注1)



(注2)

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