zepeのブログ

いつも株を買っては損を抱え込む長期低迷投資家

小池都知事、猛暑下節電要請に東電をたしなめるが...:エネルギー源確保は為政者の責任かつ最重要課題(1)

*)夏の甲子園、ピッチャー江川登場で電力大ピンチ
 随分前だが、その後阪神を経て巨人に入団し、エースとして活躍した江川卓選手。夏の甲子園で、作新学院のピッチャーとして毎試合奪三振の快投をし、チームは1-0などの省エネ得点だけで勝ち上がって行った。決勝戦の当日、お盆近く8月の最も暑いさなかの午後である。全国民がTV観戦に集中したため電力需給がピンチに陥り、もう少しで危なかったそうだ。試合は確か延長裏の回だったと思うが、汗で手が滑ったのか高めのボールとなり満塁押し出しのサヨナラゲームでお開きとなった。やれやれこれでひと安心・・と電力会社の社員は思ったことだろう。
 いま(令和4年6-7月)、日本列島連日の40度C近くの猛暑で、電力供給余力3%を切り危険水域になりそうだと政府・各電力会社は節電要請を繰返した。


*)東電を諭(さと)すかのような小池都知事の口振りだが、..
 小池都知事も都民に要請したが、それに続いてこれからこんなことをしなくても済むようにと、東京電力に対して諭すかのような口振り。
-おや? この人はなにを考えているのだろう。こんなシーンは政府発表でも、他の自治体でも、企業でも、ニュースでは見られなかった。
 いま東電になにができるだろう。


*)日本における発電の可能性
 日本の電力供給-反対派の言う通りに従ってやっていれば、
原子力は危険だから駄目-既にほとんど稼働していないが。
化石燃料はCO2ガス排出するから駄目。
 これで現在の総電力の8割は消失することになる。太陽光や風力などの再生可能エネルギーや水力発電は2割である。


化石燃料の中でも、これまで使いやすかった石炭(総発電量の3割)は二酸化炭素(CO2)排出量が多いから特に駄目。
 比較的カ-ボン排出量が少ないとされ、今後の主力エネルギー源とされるLNG(液化天然ガス)(総発電量の3割)は、ウクライナ紛争のロシア制裁で供給が欧州を中心にストップしつつあり、また日本がそれでもロシア企業との合弁を継続しようとしていたサハリン2事業も日本企業を締め出す法案にプーチン大統領は署名した。
 原子力と石炭が使えなくなりつつあるいま、LNGが今後一番の主力であるべきだが、これも不安定となると、あとは石油(5%)になる。


現在は原子力の寄与度減少分(以前の3割から現在5%)を化石燃料での発電量を増加させ補っている。しかしロシアのウクライナ侵攻以来価格が高騰し、それでなくとも企業は環境に配慮するESG投資の観点から評価され、カ-ボン排出ゼロをめざして世はクリーンエネルギーを拡充する方向にはあるから、新規に火力発電所を建設するという状況には無い。そうなると現状の火力発電所を一杯一杯にまで運転し、古くなって使用中止・廃棄の方向にあった旧火力発電所を再稼働するほかない。
 八方塞がりである。


*)エネルギー源(電力)確保は我が事にあらずのようだが..
 エネルギー源の確保は為政者の仕事である。
小池都知事の口ぶりでは、自分の責任の範疇外であるかのようである。東京都知事の管掌する仕事ではないということである。我が事にあらず、責任は他人にありという問題意識のようだ。


*)エネルギー源確保対策と選挙票
 およそ政治家たるものにとって、エネルギー源・電力確保は、国の安全保障、食糧供給、災害対策、医療保障とともに、最重要課題である。


一方、野党にとっては選挙対策で政府の攻撃材料に使う分には都合が良い。
 東電を諭すかのような口振りが、TVニュースで放映されたのは、小池都知事にとっては得点だろう。米国ではTV放映は政治家の支持率への影響力がきわめて大きいが、日本でも同様である。小池氏はそうしたセンスに長(た)けている。マスコミ出身であるだけにこうしたことには抜群のセンスを有している。
 自分は被害者で都民の不便さ、不都合さを代弁して東電にもの申す。こうした発言や姿勢は、表面で受けのよいことを言いながら裏では利権獲得にしのぎを削る男性政治家と比べ、ふだんの身近な生活で不満を感じている都民にはウケる。


エネルギー源確保についての真実を述べれば、原子力や火力発電に言及しなければならず、必ず反対派からの恰好の攻撃材料・対象となるから、なるべく触れずにおくほうが無難である。まして都民の不満の側に立って自分達は被害者で相手をたしなめるという姿勢は選挙対策としてはきわめて有効だ。小池劇場である。


*)石原元都知事だったらどうか
 先日亡くなった石原慎太郎元都知事だったらどうだろうか。
石原氏にとっては、日本の電力・エネルギー源の問題は思考の範囲外だったろうか。原発についてどのような意見であったかわからないが、反原発ということではなかったと思う。
 そして現在のエネルギー不足・電力不足は東京電力の努力不足のせいであるなどと言っただろうか。言ったかもしれないが、それだけでは終わらないだろう。
 彼は常に日本はどうあるべきかという問題意識を持ち、論争にも積極的に臨む。それが彼の生き方の人生の目標でもあり意義でもあったろうから、彼なら日本がエネルギー源・資源の安定維持のためにはどうあるべきか、なにをなさねばならないか、具体的にはいま推測できないが、吠えたことだろう。


ただこうしたことは、一刻一秒先の生活維持に懸命な民衆にとっては、目の前の物価の値上りが取りあえずの関心事であり、選挙票につながることではない。
 尖閣諸島を東京都が買入れるなどということができたのは、石原氏が絶対的な人気があって選挙を気にせず行動できたからだろう。ただ他の人間ができないことを実行し実現したのは事実である。そのためにたとえ東京都と関係無いことだと辞任を迫られたとしてもそれはそれで彼には本望だったのではないか。


*)福島原発はだれのための原発か-最大の享受者は東京都民
 ほとんどの国民が、都民が、考えもせず自覚もしていないが、福島原発はだれのために運転していたのか。福島県民のためではない。最大の享受者は東京都民である。東京都民のために長年運転してきたのである(注1)。
 小池都知事にはまるで我が事にあらず、他人の責任みたいな言い方・認識のようだが、国レベルの政治家ではなく地方自治体の首長だから関係無いとでも思っているのだろうか。
 小池都知事が原発についてどう考えているのか、しかとは知らない。ただ国レベルで考えることのできる人だから、反原発一辺倒ではないだろう。
 ただ選挙対策の上では原発は禁句だろう。必ず反対攻撃の集中砲火を浴びるからだ。


*)最高裁裁判官によれば、想定外だから国に責任は無い!..?のだそうだ。
 先日の最高裁判所判決によると、あれほどの東日本大震災級の地震・津波は想定外だから福島原発事故に国は責任は無いのだそうである。
 想定外だから国に責任は無い-それなら、これからはなにもかも責任を逃れるためには、なにも調べないでおいて、いざとなったら全く予期することはできませんでしたと言えば、責任逃れできる訳である。
 原発は必要であり推進しても、その結果、事故が起きたとしても国に責任は無い。
--これって..おかしくない?


*)地震・津波の可能性を判断するのは裁判官の能力を越える案件
 どう見てもおかしいんじゃない-!??。これらの裁判官の常識にとっては想定外としか考えられないであって、彼らの能力を越える案件に関して判決を下すという事態になっているのではないか。


東電の人間ほど知っているとは思えない。彼ら裁判官にとって人知を越える想定外なのであって、地震の専門家あるいは過去の出来事を言い伝えている伝承・民衆にとっては、決して想定外ではなく(注2)、国に責任は無いなどというズボラな認識では決してない。


現在の司法制度の人事では司法試験に合格することがすべての出発点であり、そこでは法律、判例、思想を学ぶものの理系的素養を身に付ける機会や義務もない。科学・技術の現場での経験は無いまま、主として文書に基づいて判断する。
 科学・技術が関係する判決の中には、時々えーーっ! わかっているのかなーと、疑問に思うようなことがある。進歩の速い現代の科学技術社会に司法制度が追随できていないと言うべきである。


*)日本はエネルギー源の多様化が必須
 日本のような資源少国、もっとはっきり言って無資源国では、国家経済さらには国防・安全保障の観点からエネルギーソース(エネルギー源)の分散・多様化が必須である。火力、原子力、水力、再生可能エネルギー発電のそれぞれへと。同じ火力の中でも石炭、LNG、石油へと。同じ石油の輸入先でも中東、南米、アフリカ、それにロシアがあったが。


*)1基100万kW級の発電を供給できるのは火力か原子力
 クリーンな再生可能エネルギーは、かっての総発電量の0,5%から2割まで増加し、今後もさらに拡大する方向にあるが、それとともに原子力も化石燃料も必要である。


発電能力は、原子力や大きな火力発電所では一基100万kW(キロワット)である。
 水力発電は1基数千kWから大きなもので数万kWがほとんどだ。
 風力発電では1基5千kW程度。100万kWには200基は必要。
 太陽光発電では100万kWにするには山手線内程度の総面積が必要とのこと。


ニュースでは猛暑下1度C上がると150万kW電力消費が上がると言う。火力発電所2個弱分必要になる訳である。
 再生可能エネルギーは随分増えてはきているものの、多数併せても数万kWか最も多くても数十万kWだ。天候や自然状況に左右され、かつ100万kW級まで一気呵成に大容量を実現できるかとなると、原子力や火力発電所ほどにはなかなか行かない。
 原子力は大容量発電が可能で、状況に応じて発電量を調節することが容易である。現在の総発電量の7割が火力に依存する状況では、電力需給がピンチに陥っても火力では対応能力には限界がある。正直言って原子力の寄与は欠かせない。以前のように3割程度まで負担できるなら、日本のエネルギー状況はかなり安定化するだろう。


*)エネルギー源確保は為政者の最重要課題
 中国では洪水が起きたり日照りが続いていたりして凶作・飢饉に陥ると、あるいは伝染病が蔓延して死者続出する事態になると、現在の皇帝には徳が無い、天の意向にそぐわないからだと、皇帝を廃されたり、あるいは王朝交代の易姓革命が許容されたりした。だから犠牲を捧げて天帝を崇め奉り(あがめたてまつり)ご機嫌伺いをして、雨乞いなどをした訳だ。
 日本の天皇にもそうした役割や認識がなされたこともあった。


エネルギー源や電力の確保は、国の安全保障、食糧供給、災害対策、医療保障などとともに為政者・国の果たすべき最も基本的な重要課題である。


日本のエネルギー源の将来を案じて発言したりすれば、選挙にマイナスになるのは事実であり、痛し痒し(いたしかゆし)というところである。
 日本に限らず、現在のG7首脳は皆、ウクライナ支援・ロシア制裁で一致しているが、足元はインフレ、エネルギー・資源不足で国民の支持率が低下し揺らいでいるのは事実である。


電力不足は自分の問題ではなく他者の責任とも受け取れる発言。多くの人には別にどうでもよい発言で、ほとんどの都民には賛同支持されるのだろう。
 筆者にはしかし、この人は国政がわかっていないのではないか、ポピュリズムというほどではないが、小池劇場の体質なのか...。国難にまともに向き会える政治家なのか、やはり地方自治体レベルにふさわしい思考なのか..、とも思ってしまう。


*)林真理子氏
 全く別の関係無い話だが、日本大学不詳事の後、理事長に就任した作家の林真理子氏。上述した世界とは無縁とは思うが、小池氏とはまた違う体質のようだ。非常に人気のある作家だが、人気作家たる由縁のものか、これからなにを行おうとするのか、会見での内容は非常に明快・率直でわかりやすい。同様に先日、それまでの中立政策を破棄しNATO加盟を決定する直前に日本を訪問したフィンランドの首相も、まだ若い女性であるがその質疑応答は偽りのない非常にわかりやすいものであった。これからの林氏の活躍に期待したい。


(注1)


(注2)

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