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習近平の訪露(2)-秘密協定締結から台湾侵攻発動へ

*)習近平は誰のためにモスクワへ行くのか
 数日前、「習近平の訪露」と題し、なぜいま自身がモスクワに行くのかという点について、考えを投稿した[1]。その後、本件に関するTVニュースの報道ぶり、放映内容を見ていると、筆者とは認識にだいぶずれがあるように思われた。サブタイトルを追加して再度投稿することにした。


*)的外れの報道局視点
 ニュースはすべて、ロシアへの武器供与の有無、ウクライナ侵攻の終結の仕方など、
ロシア・ウクライナからの視点、ロシアの利害観測でのみ捉えている。


*)表向きと問題の本質
 筆者は少し解釈が違う。
問題の本質は、誰の利害のために行くのかということである。
-習近平は他人のために=ロシアのために、モスクワに行くのではない。
自分(習近平)のために、自国(中国)のために、行くのである。


*)ウクライナ問題は中国の最重要関心事にあらず
 ウクライナ問題は、中国に関わる主要利害問題ではない。差し当たっての重要度は二次的に留まる。


*)習近平の最大関心事は台湾侵攻
 習近平の最大関心事は台湾侵攻である。対外的には様々な姿勢を示しながらも、根底には
本稿標題の-秘密協定締結から、(プーチンの内諾を得て、中露軍事協同行動、そして)台湾侵攻発動へ-という図式が、頭にあるのは間違い無いだろう。


*)現況は米国に二正面作戦を強いる作戦に好機
 現在は台湾侵攻発動に比較的好都合な状況にある。米国に、ウクライナ・台湾有事と、二正面作戦を強いることによって、戦略的に優位性に立てる。好機を逃さず、発動すべきと考えている。


*)ロシアも米国も欧州も武器・弾薬が払底-中国は潤沢で優位的立場に立つ
 さらに武器・弾薬の供給量の点でも、優位に立てる。
ロシアの武器・弾薬の払底はかねてから指摘されている。既に北朝鮮、イランから輸入し、さらに中国からもしようとしている。またトルコからはウクライナも購入しているが、ロシアも購入しているようである。
 米国もまた弾薬の一部や携行型対戦車ミサイル「ジャベリン」など欠乏しつつあるようだ。英国なども不足しつつあるのではないか。


ロシアもウクライナ支援の西側諸国も想定より戦争が長期に渉ることになって、武器・弾薬は払底しつつある。
 一方、ウクライナ問題から局外の立場に立ち、台湾侵攻にあたって相手を圧倒する軍事力の準備を進めてきた中国は、潤沢な武器・弾薬を温存している。


*)中国にとっての現況
 中国はウクライナと台湾という二正面作戦を米国に強いることによって、戦略的優位性に立てる状況にある。加えて武器・弾薬の供給量の点でも米国に対して優位に立てる。


*)秘密協定締結から台湾侵攻発動へ
 習近平はプーチンと交換条件の取引をして、中国が表向きはともかく、経済・外交だけでなく実質的にロシアに軍事的援助をするかわりに、台湾侵攻にあたってはロシアの強力なサポート・協動行動を確約するという秘密協定を締結する。その上で台湾侵攻を発動する。
 これが習近平のモスクワ訪問の戦略上最大の目的である。


*)台湾侵攻の時期は?-比較的近未来での発動を考えている
 そして台湾侵攻発動の時期は?-いま秘密協定を結ぶということは、5年も10年も有効のまま継続すると考えているのではない。訪露からそう遠くない1~2年レベルの比較的近未来での発動を考えているということになろう。


*)来年は米国・台湾の選挙の年-習近平は既に再任済
 米国や台湾など関係国の選挙は、侵攻を発動するか否か、あるいはその時期の決定に影響を及ぼす重要因子である。
 来年(2024年)は米国、台湾、ともに選挙の年である。


 米国では、民主党バイデン大統領が2期目に向け立候補するのか、共和党トランプ前大統領が復活するか、あるいはその他の候補が名乗りを上げるか。いずれにせよ、米国は内向きになって国際外交・安全保障に強いリーダーシップを発揮することができない権力空白の時期が、年初から11月の投票まで1年近くの長期間続く。
 また台湾の中華民国総統選挙も来年(2024年)1月に行われる。


それに対して、習近平は既に選挙(任期3期目再任)は終えている。足元は盤石(ばんじゃく)である。心置きなく思うがまま、腕を振るうことができる。
 3期目の執行部の布陣は腹心だけで固め、習近平の意向がただちに異論無く実行に移せるという、まるで戦時遂行内閣のようである。


*)台湾総統選挙との関連
 台湾の総統は民主的な選挙で選ばれる。習近平の狙いとして、
(1)親中派が政権を握り、合法的に中国化に移行する。
(2)圧倒的な軍事力を誇示して、自立をあきらめさせ服属させる。
-これらが可能なら、武力は使わなくて良い。しかし恐らくその可能性な無いだろう。


(3)選挙にあたり、親中派と台湾民主・自立維持派の対立が激しくなり、騒擾状態が誘発され、一部地域で無政府状態を惹起する-外国勢力から支援・誘導されている一派が同胞を弾圧していると称して、軍事介入に踏み切る。あるいは、
(4)台湾自立派が圧倒的な支持を得て、選挙で圧勝しそうな状況が見込まれる場合、これを放置すれば、反中・民主化路線が定着してしまい、これを押し切って武力侵攻しようとすれば、国際世論の強い非難を浴びる。こうした場合には、選挙前に武力侵攻に踏み切る。
-可能性として、(3)か(4)が考えられる。


*)このところ中国の動きが急に
 習近平のモスクワ訪問予定のニュースが流れて以後、ここにきて急に中国の動きが激しくなった。
 王毅政治局委員は、ドイツ・ミュンヘンでの安全保障会議で各国外交・国防担当者らと個別会談した後、モスクワを訪問した。習近平訪露のための地ならしである。ロシアは大喜びである。
 習近平が新任の秦剛外相ではなく、外交トップで、長く外相を務め国際関係を熟知している王毅政治局委員を派遣したところに、今回の訪露の使命が重大であることが示されている。


表向きはウクライナ侵攻1周年にあたって、和平仲裁の労を取るというような体裁の良い姿勢を示しているが、裏では武器輸出に踏み出す動き-自爆型無人機の売却等ーを図っているというニュースが流れた。
 水面下で習近平がプーチンと取引をして秘密協定を結び、台湾侵攻を発動するというステップに向けて、一歩踏み出したことを裏付ける証左である。


*)外交に急転回を図る中国-真意はなにか
 一方で和平提案しながら、他方で武器輸出を企てるという相矛盾する行動。
さらに直近ではプーチンの唯一の同盟国・ベラルーシのルカチェンコ大統領を中国に招聘した。習近平からの呼び掛けである、
 外交に急転回を図る中国-真意はなにか。何をしようとしているのか。ぞの姿勢は一様ではなく、焦点が絞りにくい。
 どこに本旨、意図があるのか-ひたすら台湾侵攻の企てをカモフラージュしながら、準備しているかのように見えてならない。


*)杞憂か?
 そんなことは起こるはずがない、考え過ぎである、と人は言うだろう。
しかしそうした起こるはずが無い、誰も考えもしなかったことが起きたのである。まるで隣人の家屋へ強盗に入るかのように、公然と他国への侵攻、破壊、虐殺が平気で行われた。ウクライナ侵攻である。


本稿で述べた想定は、当座は的外れの結果になるかもしれない。
 杞憂に終わることが一番望ましいことである。それ見ろ、杞憂だったではないかと多くの人が言う-これが一番あり得る近未来の姿であろう。
 しかしそれにも関わらず、本稿標題の図式:秘密協定締結から台湾侵攻発動へ-が習近平の頭にあるのは間違い無い。そしてこれからも変わりないだろう。


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