zepeのブログ

いつも株を買っては損を抱え込む長期低迷投資家

習近平の訪露

*)昨年正月、著名な国際関係評論家の年次見通し
 昨年(令和4年)正月、1月10日前後であったろうか、NHKラジオ第1放送でこれから始まるその年の国際時事関係を考えるというような番組があった。
 いろいろ論じていたが、最後に、その当時の安倍元首相の発言「台湾有事は日米同盟の有事である...」とか言っている。さらに「北朝鮮のミサイル発射は危険だ、放置してはならない」と言う人もいる...、と、こうした論調がいかに必要の無い、馬鹿らしいものか、無用の議論であるか、と二人で口を究(きわ)めて難じていた。


こんなことでよいのだろうか、聴いていて思ったのである。
一人は最高学府の学者であり、もう一人も著名な時事専門家である。二人ともNHKをはじめとするマスコミによく出て来る。


その後、北京冬季五輪が開催され、習近平は全世界に放映される開会式に出席して国民に印象付け、プーチンも招待した。
 欧米各国はウイグル族への人権無視を問題にし、一部当初のボイコット運動から転じて、外交的ボイコットを提案しいくつかの国は実施したが、その輪はあまり広がらなかった。


筆者は台湾有事に対する牽制としての五輪ボイコットを考える可能性もあり得ると思ったが、そうした見地からの国や識者はほぼ皆無だった。
 その後、パラリンピックが始まったが、その前にプーチン/ロシアはウクライナ侵攻を開始した。人権問題とか言う以前の、あからさまな人道への侵害無視・戦争・暴力殺人の正当化である[1]。


*)いま何故モスクワに行くのか
 習近平は近いうちに(令和5年3月か?)、訪露を予定していると言う。
在職への年齢制限の規約を改正した上での、3期目主席再任をなし終えた後、プーチンとは既に中央アジアの会議で会っている。ウクライナ戦争支援へのプーチンの要請に対し、習近平は軍事的支援には踏み込まなかった。


プーチンの期待へは応(こた)えなかった。それでは今何故あらためて会う必要があるのか。会うなら、なにかの会議でまた機会もある。特にいま会わねばならない理由があるようにも思えない。


*)習近平の思惑
 それを何故あらためて、それも自身がモスクワに出向いてまで、行く必要があるのか。
ウクライナとの調停を買って出ると言うのでもあろうか。


それを押してでも会う、と言う。
 習近平が強大な友好国と会談するとなれば、話題として台湾問題が出ないということはあり得ないだろう。


*)台湾侵攻へ踏み切るのはいつがよいか
 台湾へ軍事侵攻し占拠するにはいつがよいか。米国は阻止すべく対峙しようとしている。
適切な状況はいつがよいか-実は現在は軍事的・地政学的観点から、かなり良い状況と考えられる。


ロシアのウクライナ「侵攻」-紛争、侵略、侵攻といろいろ表現の仕方があるが、いちいち表現を慮(おもんばか)って書き表すのは面倒なので、戦争と言う表現も使用することにしよう。-


(1)ロシアのウクライナ侵攻に対して西側の支援が奏功し、ウクライナが完全な勝利を得た後
-その時点で台湾有事を起こしたら、各国から、また事を起こすのか、ウクライナ戦争からなにも学んでいない、と非難を浴びて、分が悪いだろう。


(2)ロシアが占領地の確保を確実にして勝利宣言した後
-欧米各国は、また同じ結果にしてはならないと、気を引き締めて対応しようとするだろう。


(3)解決が長引き、今のまま泥沼化した状態が続く
-ロシアの侵略に対して結束している西側諸国も、支援疲れが表面化し、国内では国民から外国の支援よりも自分達の生活支援のほうが先決だという声が多くなりつつある。そうした状況で台湾有事が勃発したら、また同じ問題か、と嫌気が差すばかり。国民の反対を押し切っても習近平の企てを阻止するべきか。自分の支持基盤が危うくなる可能性もある-やりにくい。強力に対抗することは適(かな)わない状況になる。


これは中国にとっては、外交的、地政学的、軍事的観点から、台湾侵攻がやりやすい、好ましい状況である。


*)ウクライナ紛争が長引くほど好機-米国に二正面作戦を強いる[2]
 いまの事態はできるだけ長引くほうがよい。軍事バランス的には、米国に二正面作戦を強いることになるからだ。
 中国の台湾侵攻の際、米国は阻止しようとする壁になる-これを打破するには、ロシアの協力・支持が必要である。


*)ロシアの側方支援-自衛隊を牽制、核ボタンをちらつかせる
 中国が台湾侵攻を開始する際、ロシア海軍は日本近海に出没して自衛隊を牽制し、台湾方面での米軍への協力を困難・不可能にする。
 最近の自衛隊の防備は、東シナ海・台湾近海の島嶼防衛への比重が大になり、伝統的な北方の対ソ連・ロシア防備は手薄になっている。
 既に中露両国海軍は、日本海岸のつい鼻先の近海を協動船列を組んで列島周回示威行動を何度もも繰返している。中国測量船は九州近海、小笠原諸島近海での領海侵犯をたびたび行っている。同様に両国空軍もまた沖縄-台湾間の領空侵犯すれすれに協動飛行を行っている[3]。


さらに、米軍が本格的に軍事出動し台湾防衛に出ようとすれば、プーチンが核攻撃をちらつかせて米国の本格出動を牽制するように依頼する。米国が二の足を踏む間に、中国軍は短期決戦で台湾占領を果たす。


*)台湾侵攻の政治的環境作り
 台湾侵攻は米軍の不意を突き開始する。
軍事的には既に米軍・台湾軍を圧倒する軍備の準備はできている。第一線の兵士達の士気は高い。彼らはこの日を期し、長い期間準備し訓練を重ねてきた。彼らは中国が強大になる一方の成長の時代に育ってきた挫折を知らない世代である。あとは発令を待つばかりで、やる気に満ちている。


しかし失敗はしないほうがよい。
 適切な環境を整えること-これは政治の問題である。
米軍とのパワーバランスの中で、ロシアの介入・協力は不可欠である。そのための地ならし、地固めをしておくことは重要・不可欠である。


*)プーチンは藁にも縋るほど助力が欲しい
 今はプーチンは藁にも縋る気持ちで助力が欲しい状況にある。


中国は表立っては、ウクライナ戦争に関し中立的立場を表明し、軍事的支援は行わないとしている。しかし米欧に対する対抗として、ロシアを実質的にサポートしている。


*)交換条件を交(か)わし、秘密協定を結ぶ
 習近平は、台湾有事の際のロシアの支持、軍事的協動行動、米国を牽制する側方支援、日本への牽制・軍事的拘束等を取り付ける必要がある。


そのために、秘密裏に交換条件を提示する。
 表立っては中立を保つが、実質的にロシアを援助する。経済的に、外交的に、さらに軍需物資ではないが、軍事転用がすぐに可能な民生品、あるいはパーツとして転用可能な半導体を多く装備する商用物品などの形で、軍需装備品の面からも大規模に支援する...、と提示する。
 その代わりに、台湾有事での中国の立場を支持・補強・軍事的協同行動を実施し、台湾占拠の実現に協同して行動するという確約を得る-等々の秘密協定を結ぶ。
 台湾侵攻を発動するにあたっての裏を固めておく-これが訪露の最大の眼目ではないか。


*)一瞬の軍事的・外交的・地政学的空白を狙って、一気に短時日で決着する
 台湾は一度占拠すれば、取り戻すことは不可能である。中国本土から至近の小さな島である。
 地政学的に似た状況として、かって米国の内庭とも言うべきキューバで、カストロが起こした革命に対して、政権の転覆を図るべく、ケネディ大統領が上陸作戦を決行した事例がある。これは失敗に終わった。その時とは状況は全く異なる。


*)中国市場を無視できない西側諸国
 欧米は非難するだろう。
しかし香港を見るがよい。いくら非難してもなにもできない。非難はしても成り行きで、その事態を認めざるを得なくなる。なぜなら巨大な中国市場を無視しては、自国の経済が立ち行かなくなるからだ。いくら非難しても中国市場に対する、喉から手が出るほどの魅力には勝てない。


*)台湾侵攻-ここ2~3年で踏み切るか
 ウクライナ侵攻が長引いて、あと1~2年続けば、中国軍部は好機と見て、軍事侵攻に踏み出す可能性がある。
 ここ1~2年で台湾有事が起きる-可能性としてはあり得る。


*)日本への接近
 この間、もし中国が孤立するようなことがあれば、日本への接近を図るだろう。これは過去手詰まりになったいずれの場合でもそうであった。日本はそのたびに応じ、助力を惜しまなかった。普段は日本非難を惹起し繰返すのが常態だが、必要に迫られれば、今後も日本に接近することがあろう。特に半導体技術の移入が制限され孤立状況に陥った場合、日本を取込もうとする可能性がある。


*)池田勇人から岸田首相への系譜
 以上はあくまで筆者の想定した仮定の話である。あまり考えたくもない事態であるが、杞憂であるかもしれない。
 しかし空々(そらぞら)しいことを考えていると難じる高名な学者・評論家とそれを有難がる一部マスコミよりは、真実を含んでいるものと考える。


国家の存立危機事態への対処能力を整備し、対応する外交的・国際的・地政学的安全保障の枠組みを構築しておく-これらは為政者の責任である。
 岸田首相は、概ね上述した事態が起きることを想定し、それに備える方向で外交・防衛を組み上げるべく動いていると理解される。
 日本が占領下から国際社会に復帰したサンフランシスコ平和条約には、池田勇人蔵相(当時)が全権吉田茂首相の随行員として調印に立ち会っている。岸田首相は、池田勇人元首相を敬愛し、その後継を秘かに(?)自任する保守本流の政治家である。



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