zepeのブログ

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フルシチョフ:強制収容所を描いたソルジェニーツィンの著作出版を容認-人間の顔をした社会主義:ゴルバチョフ氏逝く(3)

*)ソルジェニーツィンの「イワン・デニーソヴィチの一日」出版
 1956年フルシチョフの権力掌握、スターリン批判秘密報告後の雪解け政策、粛清者名誉回復により、ソルジェニーツィンは解放され、1972年にラーゲリ(強制労働収容所)の生活を描いた「イワン・デニーソヴィチの一日」を出版した。
 それまで公開出版など全く考えられなかった、粛清者の運命-処刑されたり、シベリヤ送りになったり-に関する著作が話題になったのは、秘かに読むニーズがある、そうした読者層があるということである。


・検挙者はいつ引っ立てるのがよいか
 秘密警察(GPU:ゲーペーウー)が被疑者・検挙者(=犠牲者・被害者)を引っ立てるのは、就寝中の最も眠りが深くなる夜明け前を狙って自宅を襲うのがベストである。寝ぼけまなこの状態を狙ってたたき起こし、引っ立てる-人間が最も弱い・抵抗しにくい状態だからである。-これが一番効く。この手法は古今東西いずこでも同じなのだろうか。


・出来損ないの予言者
 フルシチョフという名前の男がある時、占い師から将来大出世して国王になるだろうと予言された。男は喜んで周囲にも語り、悦に入りながらその時を待った。しかしいつまでたってもその時は来なかった。フルシチョフという名の別な男が首相になったのである。


・鳴り止まぬ拍手。永遠に続く手叩きマシーン。あー、会議はつらいよ!。
 ある会議で党幹部が演説を終えると、参加者・聴衆は全員総立ちで割れんばかりの拍手、拍手また拍手、拍手が鳴り止まない、いつまでたっても鳴り止まない、ああー 腕が痺(しび)れてきた、手の平も痛くなってきた、それでも人々は拍手を止めようとはしない、いつまで続くのか、過呼吸になって失神しそうだ、それでも誰も止めようとはしない、最初に止めて目を付けられたら粛清の対象になり、会議後引っ立てられてシベリヤのラーゲリ(強制収容所)送りになるかもしれない...。こうして会議は拍手をし続ける巨大なマシーンと化す、など。


*)ソルジェニーツィンを認め・推奨したフルシチョフとゴルバチョフ
 こうした書物が依然として出版に国難があったと言えども、流通できたのはフルシチョフの雪解け政策のおかげであろうし、1964年のフルシチョフの失脚後、再度公に堂々と出版されるのは1985年以降のゴルバチョフのペレストロイカ(改革)、グラスノスチ(情報公開)の時代になってからである。


 フルシチョフは学者ではなく、労働者上がりの叩き上げの共産党員であるが、文化にはなかなか敏感なところがあり、不当に取扱われ埋もれていた個人やその芸術・文化作品の復権・顕彰に敏感に動くところがあったと見え、
 問題あるこの書物を、委員会で殊更に共産党幹部の前でこれは良い本だなどと取り上げたりしたようだ。権力を握ったとは言え、依然として相当数の保守派がおり、彼らが好まぬ傾向の思潮の書物を目の前で開けっぴろげで礼賛するなど、潜在的な危険性があるのはもちろんだが、それを気にしないで振る舞うところなど、そうしたキャラクターは不用心ではあるのだが、民衆にはある種の人気があった。
 日ソの平和条約であったか、領土交渉だったか、漁業交渉であったかの時に、ソ連側代表団の末席のほうにいた男が交渉するなら酒でかかって来いというような挑発をしたので、その頃担当大臣だった河野一郎(現河野太郎・行政改革担当大臣の祖父か?)が、なにを!っと、酒(ウォッカか?)をがぶりとあおって交渉会談に臨んだ。その男は後に首相になった、当時は指導部の中ではまだそう重鎮ではなかったフルシチョフだった。


*)スパイゾルゲの顕彰
 スパイゾルゲは第二次世界大戦時、ソ連への日本の北進は無いと読み、そのためスターリンは二正面作戦に陥ることなく、欧州戦線での対独戦争に全精力を注力できた。ゾルゲの貢献はソ連では無視されたまま顧みられることが無かったが、戦後その功績に対して追贈された。この埋もれていたゾルゲの功績を取り上げ、顕彰したのもスターリンではなく、フルシチョフだったようだ。


*)プーチン政権下でのソルジェニーツィンの著作の位置付けは?
 1964年にフルシチョフが失脚し、ブレジネフ時代になるとソルジェニーツィンの著書は再び発禁処分になったが、1970年にはノーベル文学賞を受賞。その後海外で主著「収容所群島」を秘密出版し、1974年国外追放となった。ブレジネフが死去し、1985年ゴルバチョフが政権を握ると、ゴルバチョフもまたフルシチョフと同じくソルジェニーツィンを推奨した。
 1991年ゴルバチョフが失脚した後、1994年混乱のさなかにあるロシアに帰国したが、国内の混乱と祖国の凋落を見て、ロシアを再び偉大にするというプーチンの出現を支持したようだ。
 2008年に死去したが、現在のプーチン政権下ではどのように位置付けられているのだろうか。反対勢力を国家反逆罪などと弾圧しているプーチンの立場からすれば、ソルジェニーツィンの著作の内容は都合が悪いように思えるのだが..。

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