zepeのブログ

いつも株を買っては損を抱え込む長期低迷投資家

(再)日本主導国際戦略の展開=米国世界戦略における不動の核心:安倍氏死す(1)(短縮版)

*)安倍氏死す-置き換えできない国家の損失
 安倍晋三元首相は、ほかの日本人の誰にもできない国際世界の枠組みを構想し、世界に提起し、実現した。誰もが予期せぬ短絡的な犯行による凶弾に倒れた。かけがえのない指導者の、取り返しの効かない損失である。


*)台湾有事と自由で開かれたインド太平洋構想
 この秋予想される中国習近平主席の規定を変更しての3期目続投。ウクライナ侵攻中のロシアに対して外交的・経済的支持してはいるものの、表立っての軍事的支援などはせず、米日欧との対立の裏で石油・天然ガス等の資源を安く買入れ、何食わぬ顔をして実利を得ている。一方3期目就任に格別の邪魔が入らないよう、ひたすら時が過ぎゆくのを待ち続けている。
 続投確定後本格化するであろう台湾有事。欧州ウクライナ紛争は長引き、加えて地球規模では台湾・南/東シナ海・太平洋における中国覇権膨張主義を巡る緊張状況が差し迫るだろう。


*)日本主導国際戦略の展開
 公海である南シナ海での力による一方的な進出・自国領海化。さらに米国と対峙し世界覇権を目指す中国に対して、安倍氏は日米同盟を強化堅持し、日米豪印4カ国戦略対話(クアッド)を提唱し民主主義陣営の連携を構築した。経済的にはTPPの締結・発足を実現し自由貿易圏経済体制を推進した。


*)国際社会で主導性を発揮し積極提議
 中国は一帯一路政策でユーラシア・インド太平洋から欧州にかけての諸国に財政的援助と称して債務の罠に陥れ軍事的・戦略拠点を拡大している。
 一方的な現状変更・自国領土化に対して、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋構想を創出し、自由主義陣営を結束して対抗し、また香港の自由抑圧に続く台湾有事も見据えて、G7首脳会議では各国首脳に熱意をもって提議・説得した。
 その結果、英国ジョンソン首相はウクライナ支援とともに、インド太平洋地域にも空母打撃群を派遣し日本にも寄港させた。同様にフランスも海軍を派遣し、中国と経済的なつながりが大きい独海軍も追随した。


*)米国世界戦略における不動の核心
 インド太平洋を俯瞰する世界地図を開いてみよう。米国と価値観・方向性を共有し、信頼し依拠し得る活性点が、中央右寄りに輝きを放って存在している-それが安倍氏である。氏は米国の世界戦略を遂行する上で、志向する目標を同じくする不動の核心であった。


*)他で置き換えの効かない指導者
 構想力・海外要人とのネットワーク・牽引力-どれを取っても氏に代わり得る人物は見当たらない。インド太平洋諸国、とりわけ米国・台湾にとって核となるべき人材の喪失は大きい。今後の中国対抗網の構想における活動の核心を失って再構築が必要になった。
 氏は英国・台湾のTPP加盟の実現、将来的にはクワッドに英国を加えた日米英豪印体制を実現しておくべきであった。


*)国内外の影響力の喪失
 中国とロシア海軍は共同で領海すれすれに日本列島周回行動を繰返している。見え見えの示威・威嚇である。両国空軍もまた領空侵犯すれすれの行動を行っている。日本もなめられたものである。いつ接触、不可避的に衝突が起きても不思議でない。台湾・北朝鮮有事の状況によっては一触即発、さらに戦闘状況が起こり得る可能性がある。
 日本の取るべき対応、自由主義陣営との連携・同盟の構築に氏の経験と歴史観・世界観に基づくアドバイス、海外指導者とのネットワーク、影響力は必須のものであった。


*)ブリンケン国務長官弔問に訪日-日米同盟・自由主義陣営の再構築
 安倍氏が凶弾に倒れたのは、G20外相会合がインドネシアで開催されている最中だった。米国ブリンケン国務長官は会議終了後その足で訪日し、日本国民に弔意を表した。
 時を失することなく岸田首相とも会談し、日米同盟の結束、インド太平洋地域の安全保障への日米の関与等をあらためて確認したものと考える。


*)岸田首相-将来に対して布石を打つ
 岸田首相は日米同盟を堅持し日米豪印クアッドを開催した。バイデン大統領は記者会見で台湾有事に米国は干与するのかという質問に対し、待っていたかのようにYesと答えた。直後米国当局は台湾政策は従来通り変わりないと訂正した。同様な失言を繰返して来ているが、今回はインド太平洋地域に来てはるかに明確にYesと明言している。


岸田首相はG7やNATO会議において、ロシアによるウクライナへの一方的な侵攻以来、法による支配・国際秩序を揺るがせる暴挙だとし、看過すれば同じことがインド太平洋でも起き得るとして、中国という具体的名称を上げて、インド太平洋地域での安全保障に今後関与するという方針を引き出させている。
 これは台湾有事を含む近未来に起こり得るであろう国際危機に対する安全保障・予防的措置を講じるものであり、将来への布石・投資である。

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