zepeのブログ

いつも株を買っては損を抱え込む長期低迷投資家

ジョンソン首相要請の英国市場上場もありか?:9904ソフトバンクGによる英国アームのIPO上場問題(1)

*)アームは英国の国の至宝
 アームは英国の半導体設計会社で世界の企業がその技術を採用する超優良会社であり、英国が誇る国の至宝とも位置づけられる。9904ソフトバンクGはアームを買収した後、米国半導体会社エヌビディアへの売却を企図したが(注1)、EU、米国ほか各国当局から独占禁止法抵触の恐れがあるとの理由で許可が得られなかった(注2)。


*)ソフトバンクG孫社長ナスダック上場を計画。ジョンソン首相翻意を促す。
 孫社長は方針を転換し、ハイテク企業が集まる米国ナスダック(NASDAQ)市場にIPO(新規株式公開)上場する準備を進めている。
 これに対し、英国政府はロンドン証券取引所(LSE)に上場するよう要請し、ジョンソン首相自ら孫社長に手紙で依頼したと言う。


*)なぜこれほど大がかりな依頼をするのか。
 このソフトバンクGの計画に対し、ロンドン証券取引所、英国政府の技術・デジタル経済相、投資相、そしてジョンソン首相が考え直すよう説得を試みている。


なぜこれほど大がかりな依頼をするのか。
 ジョンソン首相としては英国の至宝とも言える世界的半導体設計会社アームが英国企業であり続け、またロンドン証券取引所を主要上場市場とする体制を維持したい。


一方、英国がソフトバンクGへのアーム売却を認めたのは、売却先が日本の会社であり、ソフトバンクGであり、孫社長であったからだというのは、許諾を決定する際に大きな影響力を占めていたのは間違いないだろう。相手の会社によっては売却を認めない選択肢もあったはずである。英国政府にはそうした気持ちもあるのではないか。


*)ジョンソン首相苦境にあるも、その確固たる対外方針は全世界の自由陣営にとって力強い寄与
 ジョンソン首相はいま苦境にある。
EU離脱に関してはそれが正しい決断であったか、誤りであったかは論議の分かれるところであり、もともと半数近い国民は反対だった。また賛成はしたが、当初期待したほどのメリットも得られず失望する国民も多い。またコロナ自粛期間中にパーティーに興じていたというので顰蹙を買ってもいる。
 エリザベス女王在位70周年記念式典に参列しようとした際には、ブーイングをもって迎えられた。


しかし彼の国際関係における視点と行動は、英国および西側陣営あるいは自由主義陣営の国際安全保障を強力にサポートするものであり、その寄与と効果のほどは他では置き換えられぬものだ(注3)。
 ロシアのウクライナ侵攻に対しては間髪を入れず軍事的支援を実施し、またそれまでの中立政策からNATO加盟に踏み切ったフィンランド・スウェーデンに対しては、正式加盟前にロシアに侵攻されるのではないかという危惧に対し、即座に安全保障同盟を締結した。
 ロシア・プーチン大統領にとっては目の上のたんこぶの如く思われているようだ。ロンドンに核攻撃するとか、最近は英国人捕虜を裁判で死刑宣告するなどいやがらせをして手を引かせようとしている。
 まだ歴史的評価はできる段階ではないが、彼のめざす国を導いて行く方向性と視点は正しいものと思う。


*)資本主義の論理から言えば、ナスダック上場がベスト
 GAFAMと呼ばれるアマゾン、マイクロソフト、アップルなどやアリババなどの巨大成長企業のほとんどはナスダックに上場し、世界中から投資資金が集まってくる。アームはそうした市場に上場することで一層価値が認められることだろう。
 資本・投資の論理からすれば、ナスダック上場がベストであるのは言うを待たない。それ以外は企業の価値に見合う対価を必ずしも得られない存在のままで居続ける可能性が高い。


*)ナスダック上場後の大株主は?
 IPO新規株式売出を行った場合、大株主はどこになるだろう。
ソフトバンクGも株式をある程度継続保有する意向のようである。
 それ以外ではやはり米国金融および半導体会社になるのではなかろうか。あるいは大規模ファンドか。英国、日本の企業・投資家も参加するだろうが、経済規模の違いから言って、米国系が主体となるのは当然だろう。あるいは中国系資本も参加、公(おおやけ)にあるいは秘かに株式を買い集めるかもしれない。
 いずれにせよ、英国の手から離れていく方向にあるのは間違いない。


*)日本企業の場合
 いま日本では東芝が擦った揉んだしている。
物言う株主、海外大規模ファンド、関連海外半導体企業等が株式保有の大多数を占め、なかなか会社経営、あるいは研究開発、事業発展に集中できない。その事業内容は国益に関するものが多くあり、会社を外国企業に売り渡すことは国の安全保障の観点から望ましくない。
 もし東芝を台湾企業が買収し、原子力や半導体事業に関する主力工場を中国本土に建設したらどうだろう。安全保障や高度先端技術に関する情報・技術が流出するのは目に見えている。


日産に対するフランス政府の介入を見よ。前社長ゴーン氏はインドに計画していた工場建設をフランスに持っていった。雇用を創出したと言って、マクロン大統領は自己の成果と誇り、選挙対策にもなり、大喜びである。ゴーン氏もその手腕を認められ、フランス政財界での地位も更なるステップアップをし、また生まれ故郷レバノンでは将来の大統領候補かとも目された。
 もし日産をフランス政府が完全買収し、日産の開発した電気自動車技術をフランスに取込んで会社もフランスの会社とし、メインの株式上場市場をフランス、あるいはドイツ・フランクフルト市場に移したらどんなものだろう。


*)金で買えない意義
 英国からすれば、自国の至宝とも言うべき優良会社アームの運命が、ソフトバンクGの孫社長の胸先三寸にあって、英国の意向は関係無いと言うのはどんなものだろうか。
 資本の論理から言えば、株式最多保有者が決定権を握るのは当然だろう。道義的な問題や政治的特殊事情を勘案するというのは却って百害あって一利なしと言うのも事実ではある。


しかし英国がソフトバンクGへのアーム売却を認めたのは、売却先が日本の会社であり、ソフトバンクGであり、孫社長であったからだというのは、許諾を決定する際に大きな影響力を占めていたのは間違いないだろう。相手の会社によっては売却を認めない選択肢もあったはずである。


*)投資の損得以上のものがあるかもしれない
 会社経営、株主、資本主義の論理から言えば、NASDAQに上場したほうがアームにとってもソフトバンクGにとってもよいのは明らかである。


しかし英国市場上場には、ファンドとしての利益は劣るかもしれないが、将来に向けてメリットもあるかもしれない。これはなんとも言えない。
 ただ恩に対して恩で返すのは意味があるかもしれない。あるいはもっと生々しく言えば、いまここで恩を売っておくべきである。単なる投資の損得以上のものがあると思う。
 これは金では買えない問題である。


*)日本はアームの株式保有・安定維持と英国のTPP加入を迅速に推進せよ
 日本政府は民間企業のことには立ち入らないと思うが、国策の観点からは日本が株式を保有するのは国益にかなう。
 はっきり言って日英両政府が互いに協調して一定量の株式を持ち合うというのはありと見る。日本は英国のTPP(環太平洋経済連携協定)加入手続きを迅速に進めるとともに、アームの安定維持発展と英国経済、英国市場活性化への寄与を図るべきであり、日本と英国はそれぞれ一定量保有するべきである(注4)。
 日銀は国内・国外の株式を買入れているが、アームの株式を買い込み、株式を一定量保有すべきである。


(注1)


(注2)


(注3)


(注4)

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