中国富強の源泉-中国が演ずるウクライナの和平仲裁(3)
*)台湾有事と反スパイ法
いまの習近平中国にとっては台湾有事が最重要課題である。現在進行中の中国国内外の動きはすべて、この発想から俯瞰すると理解できる-国内人員動員体制、情報管理、海外での警察行動、反スパイ法の恣意的運用、中露両軍の軍事協動行動等々。
*)相矛盾する要求:反スパイ法施行、しかし投資は大歓迎と
一方で反スパイ法で情報統制と人民管理・統制を強め、日本をはじめとする外国企業の人間に対しても、明瞭さを欠く容疑で拘束しながら、他方で外国企業の投資を歓迎すると言う。
海外の人間からすれば、どちらが中国の望むところなのか-統制なのか、外国資本の投資受入れなのか-この相矛盾するどちらかと戸惑うばかりである。
だが、中国にとってはどちらもやりたい事なのである。
*)利得と富裕を希求するあくなき経済活動-中国国民の根底にある民族的特性
中国人民にとって経済活動は民族的特性であり、多くの人々にとって日々の最大関心事である。
*)毛沢東の革命で実現できたのは、中華民族の関心事の半分
この意味で、毛沢東による農民の希求関心事である共産主義的平等社会実現は、民族の一方の要求・夢ではあったが、他方では自由な経済活動、利殖・富裕を求める人生の夢・商売の道を閉ざすものであった。その民族的才能の自由な開花を押さえ付けられたのであれば、その民族的性向からすれば、半分は抑圧から開放されたものの、他の半分は開放されていない社会であったと言えよう。
*)中国国力富強の源泉-外国企業の資本投下
強大な中国の国力の源泉は、その富と経済力にあり、その源泉は決して止むこと無く、滔々と流入する外国資本の投資にある。
だから一方で反スパイ法で情報統制と人民管理・統制を強めながら、他方で外国資本の投資を渇望するのである。
外国資本には投資してほしい-それは彼らが一番好むところのものだからだ。但し中国の望む体制の管理下で唯々諾々と従って、と。
今日の強大な中国の国力の源泉は、相争うように中国市場に投下する外国資本の投資なのであるから、逆に極言すれば、中国の富強、世界覇権への野望を遮(さえぎ)るためには、中国市場への投資を抑止しなければならない。
しかしこれができるか。
ドイツにせよ、フランスにせよ、中国の覇権主義に反対するかのような政治・外交的姿勢は取るものの、実は彼らの最大関心事は中国との貿易、その更なる拡大である。それは経済の伸展にとって最も重要な市場であり、従って彼らの政権維持率にも大きな影響を及ぼすをものだからである。
まして中国の覇権主義・影響力拡大を最も警戒するにもかかわらず、資本主義国である米国においてをや。
世界最大の企業群-アップルにせよ、テスラにせよ、その製品の主要生産国は中国であり、またその最大または主要輸出顧客は中国である。資本主義国米国にとって最大の魅力的市場は中国である。これを無視することはできない
*)中国への資本投資のコントロール
習近平中国の覇権主義的世界拡大を停止させるには、国際社会における中国への外国資本の投資をコントロールする体制が必要である。しかし世界の一方がこれを実施すれば他方はこれ幸いと中国市場に入り込むだろう。困難である。
だがいずれかの時点で、投資をコントロールする国際ルールの確立が必要になるだろう。